
2026年8月14日現在の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。 個別の取引や申告の判断は、保有銘柄、売却経路、取得履歴、他の所得等により異なります。
顧問先から「暗号資産の税金は、もう20%になったのですか」と質問される機会が増えています。2026年は暗号資産課税にとって大きな転換点です。もっとも、説明にあたっては「法律は成立済みであること」と「実際の適用開始日は金商法改正の施行日に連動すること」を切り分けなければなりません。
2026年3月31日には、特定暗号資産の譲渡に関する申告分離課税の骨格を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」が公布されました。さらに、同年7月15日には、暗号資産に係る規制見直しを含む金融商品取引法・資金決済法の改正法が成立しています。したがって、「法案審議次第で制度内容が変わる段階」という説明は、現在の状況には当てはまりません。 国税庁「令和8年度 税制改正のあらまし」、PwC Japan「暗号資産に係る2026年金商法等改正法の成立」
一方で、個人の申告分離課税がいつ始まるかは、改正金商法の政令で定める施行日との関係で決まります 。法文上、分離課税は改正金商法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う譲渡等から適用されます。2027年中に施行される場合、適用開始は2028年1月1日となる見込みです。税率20.315%への移行を前提に説明しつつも、施行日そのものは政令の確定を確認する必要があります。
まず結論|「法律は成立済み、適用開始日は政令待ち」が正確な説明

顧問先への説明で最初に伝えるべきポイントは、以下のとおりです。
| 論点 | 2026年8月時点の整理 |
|---|---|
| 制度の法制化 | 所得税法等改正法は2026年3月31日に公布。金商法・資金決済法の改正法は2026年7月15日に成立済みです。 |
| 適用開始 | 改正金商法の政令による施行日の属する年の翌年1月1日以後の譲渡等から適用されます。2027年中施行なら、2028年1月1日開始となります。 |
| 分離課税の税率 | 所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%の合計20.315%です。 |
| 対象 | すべての暗号資産取引ではなく、原則として特定暗号資産を国内の登録業者経由で譲渡する取引です。 |
| 未確定の事項 | 改正金商法の具体的な施行日、特定暗号資産の対象銘柄・除外範囲、計算方法などの細目は、政省令・通達等の確認が必要です。 |
現行制度では、個人の暗号資産の売却・交換・使用による利益は、原則として雑所得に区分され、他の所得と合算する総合課税の対象です。所得税・住民税の本体税率では最高55%となり、復興特別所得税も考慮した最高限界税率は約55.945%です。国税庁「No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」
現行制度と改正後の違い

| 項目 | 現行制度 | 新制度(適用開始後 ) |
|---|---|---|
| 課税方式 | 原則として雑所得・総合課税 | 特定暗号資産の一定の譲渡等について申告分離課税 |
| 税率 | 所得状況により変動。所得税・住民税の本体税率で最大55% | 20.315% |
| 損失 | 給与所得・事業所得等との損益通算は不可。翌年以後への繰越控除も不可 | 分離課税の対象取引で生じた損失について、一定の要件の下で3年間の繰越控除 |
| 対象範囲 | 暗号資産取引全般について、所得区分を個別に判定 | 「特定暗号資産」かつ法定の譲渡経路を満たす取引 |
| 申告 | 取引履歴・取得価額を基に自身で計算 | 申告分離課税後も、原則として確定申告と記録管理が必要 |
改正後も、暗号資産の利益が一律で20.315%になるわけではありません。税率だけに注目して「すべての取引が株式と同じ扱いになる」と理解すると、実務上の誤りにつながります。

いつから変わる?制度改正のスケジュール

制度の経緯と、今後確認すべき事項を時系列で整理します。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年12月19日 | 令和8年度税制改正大綱で、特定暗号資産の申告分離課税に関する方針が示されました。 |
| 2026年1月1日 | 日本版CARF(暗号資産等報告枠組み)が施行されました。 |
| 2026年3月31日 | 所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)が公布されました。 |
| 2026年7月15日 | 金融商品取引法・資金決済法の改正法が成立しました。 |
| 今後 | 改正金商法の施行日が政令で定められ、対象銘柄・計算方法等の細目が政省令・通達等で整理されます。 |
| 2028年1月1日(見込み) | 改正金商法が2027年中に施行された場合、特定暗号資産の申告分離課税が適用開始となります。 |

ここで重要なのは、法律の成立と個人の取引への適用開始は別の論点だということです。法律そのものは成立していますが、適用開始日の基準となる改正金商法の施行日は、政令で確定する必要があります。顧問先には「制度は法制化済み。ただし、開始日は施行日に連動するため、現時点では2028年1月1日が有力な見込み」と説明するのが適切です。暗号資産の分離課税の適用時期と経路要件の解説
分離課税の対象は「特定暗号資産」かつ「国内登録業者経由」の取引

新制度の現物譲渡に係る申告分離課税では、少なくとも次の二つを満たすことが重要です 。
| 要件 | 実務上の確認事項 |
|---|---|
| 銘柄要件 | その暗号資産が「特定暗号資産」に該当するかを確認します。国内で取り扱われている銘柄であっても、最終的な対象範囲は財務省令等で確認が必要です。 |
| 経路要件 | 国内の暗号資産取引業者への売却・売委託など、法定の方法による譲渡であるかを確認します。 |
したがって、海外取引所やDEXで直接売却・スワップした場合、分離課税の対象外となる可能性があります。反対に、海外取引所等で取得した暗号資産であっても、最終的に国内の登録業者を通じて売却し、銘柄要件も満たす場合には、対象となり得ます。取得場所だけで判断せず、「何を」「どの経路で売却したか」を取引単位で把握することが必要です。

また、ステーキング、マイニング、レンディング、DeFi報酬などは、報酬を受け取った時点の課税と、その後に売却した時点の課税を分けて検討します。受領時の時価相当額は原則として総合課税の対象となり得ます。一方、受領後に値上がりした部分を売却した際の取扱いは、銘柄・経路などの要件を踏まえて別途判定します。詳細な通達・FAQが公表されるまでは、取引記録を特に丁寧に保存しておくべきです。
損失の3年繰越控除|「改正後の対象取引の損失」が出発点

新制度では、分離課税の対象となる特定暗号資産の取引で損失が生じた場合、一定の要件の下で翌年以後3年間、将来の対象利益から繰越控除できる仕組みが設けられます。ただし、上場株式等との損益通算はできません。

注意すべきなのは、適用開始前の損失は新制度に自動的に持ち込めない点です。現行の総合課税期間に生じた損失や、適用開始時点の含み損が、そのまま繰越控除の対象になるわけではありません。また、繰越控除を受けるには、損失が発生した年から継続して確定申告を行うことが重要です。
顧問先には「赤字であっても、取引記録と申告を後回しにしない」よう早めに案内しましょう。国内・海外取引所、ウォレット、DEXを横断した取得価額の集計が難しいケースでは、CSVデータ、送受信履歴、ウォレットアドレス、手数料の記録まで保管するよう促すことが実務上有効です。
CARFは2026年1月1日施行|「即時にすべて把握される」とは説明しない

CARF(Crypto-Asset Reporting Framework、暗号資産等報告枠組み)は、暗号資産取引に関する情報を、取引業者から税務当局へ報告し、参加国・地域の税務当局間で自動的に情報交換するための国際的な枠組みです。日本版CARFは2026年1月1日に施行されています。PwC Japan「日本版CARF(暗号資産等報告枠組み )導入」

ただし、CARFを理由に「海外取引所の情報が直ちに、例外なく日本の税務当局へ届く」と断定する説明は避けるべきです。実際の情報交換は、取引業者の所在国・地域、参加状況、税務上の居住地、報告対象性などに左右されます。国税庁によれば、国内の暗号資産交換業者等は、一定の非居住者の取引情報を年次で報告する仕組みとなっています。国税庁「暗号資産等報告枠組み(CARF )に基づく自動的情報交換に関する情報」
税理士としては、CARFを「申告漏れを前提とした威圧的な説明」に用いるのではなく、国境をまたぐ取引を含め、取引履歴と税務居住地の情報を整える必要性が高まっていることを伝えるのが望ましいでしょう。
税理士・会計事務所が今から整えるべき実務体制

分離課税の開始を待つだけではなく、現時点から顧問先の取引実態を棚卸ししておく必要があります。特に、取引経路と取得価額が不明確なままでは、適用開始後も正確な申告はできません。
| チェック項目 | 実務上の目的 |
|---|---|
| 暗号資産取引を行う個人・法人顧問先を把握する | 申告漏れ・期末評価漏れのリスクを早期に発見します。 |
| 利用先を国内取引所・海外取引所・DEX・自己保管ウォレットに分類する | 分離課税の経路要件やCARF対応の前提を整えます。 |
| 取引履歴、取得価額、送受信履歴を保存する | 損益計算、経路判定、税務調査対応の基礎資料とします。 |
| ステーキング等の報酬取引を切り分ける | 取得時と売却時の課税関係を混同しないためです。 |
| 会計・申告ソフトの対応方針を確認する | 分離課税・法定報告制度への将来的な対応可否を把握します。 |
| 顧問先向けの説明文を更新する | 「法律は未成立」といった古い説明を排除し、適用開始日の条件を正確に伝えます。 |
暗号資産を扱う顧問先が少数であっても、初回の聞き取り項目を標準化しておくと、後の申告・調査対応の負担を抑えられます。事務所全体の業務設計やソフト選定を見直す際には、税理士顧問料の相場とDX対応での選び方もあわせて確認するとよいでしょう。
法人の期末時価評価と相続実務は、個人の分離課税と別に確認する

今回の申告分離課税は、主として個人の所得税に関する制度です。法人が保有する暗号資産については、個人の分離課税とは別に、法人税上の期末時価評価の取扱いを確認する必要があります。活発な市場が存在する暗号資産は、原則として期末時価評価の対象となり得ますが、一定の譲渡制限付き暗号資産や自己発行暗号資産には例外があります。保有目的、譲渡制限、流通状況を踏まえた判断が必要です。
また、相続では、保有の有無の把握、秘密鍵・シードフレーズ等へのアクセス、取引所アカウントの承継手続、評価時点の価格資料の保存が実務課題になります。税額計算だけでなく、相続人が資産を把握・管理できる体制まで含めて確認することが重要です。資産評価を含む相続実務の見直しには、相続税対策マンション購入の評価方法の大転換も参考になります。
よくある質問(FAQ)

Q1. 暗号資産の分離課税は、もう確定していますか?
制度の骨格は法制化されています。 所得税法等改正法は2026年3月31日に公布され、金商法・資金決済法の改正法も同年7月15日に成立しています。ただし、個人の取引に対する適用開始日は改正金商法の施行日に連動するため、政令による施行日の確定を確認する必要があります。
Q2. 2028年1月1日から必ず20.315%になりますか?
2027年中に改正金商法が施行される場合、2028年1月1日からの適用となります。もっとも、法令上の基準は「施行日の属する年の翌年1月1日」であるため、政令で施行日が確定するまでは、2028年開始を確定日として断言しないことが大切です。また、20.315%となるのは、分離課税の要件を満たす取引に限られます。
Q3. すべてのビットコインやアルトコインが分離課税の対象ですか?
いいえ。対象は特定暗号資産に限られます。さらに、国内の登録業者への売却・売委託など、所定の経路で譲渡することも必要です。対象銘柄の範囲や除外銘柄は、今後の財務省令等を確認してください。
Q4. 海外取引所で買った暗号資産は、分離課税の対象外ですか?
取得した場所だけで一律に決まるわけではありません。海外取引所で直接売却・交換した場合は対象外となる可能性がありますが、海外で取得した暗号資産を国内の登録業者に移し、対象銘柄を所定の経路で売却する場合は、分離課税の対象となり得ます。取引ごとの経路を記録しておくことが重要です。
Q5. 2027年までに生じた損失は、将来3年間繰り越せますか?
原則としてできません。3年間の繰越控除は、新制度の適用開始後に分離課税の対象取引で生じた損失が前提です。適用開始前の損失や含み損が自動的に繰越対象になるわけではありません。繰越控除を利用する年は、損失が生じた年から継続して確定申告を行う必要があります。
Q6. CARFが始まったので、海外取引所を利用した事実はすぐに税務署へ伝わりますか?
CARFは国際的な自動情報交換の枠組みですが、情報交換の時期・範囲は、取引業者の所在国・地域、制度への参加状況、税務居住地、報告対象性などによって異なります。「すべての情報が直ちに伝わる」と断言するのではなく、海外取引所やウォレットを含めた取引履歴を整備し、適正な申告を行う必要性が高まっていると理解するのが適切です。
まとめ|税率より先に「取引経路と記録」を整えるべき

2026年の改正で、暗号資産の申告分離課税は、もはや単なる要望や税制改正大綱の方向性ではなく、法律として制度化されたテーマになりました。税理士・会計事務所としては、「法案が成立するかどうか」を説明する段階から、「顧問先のどの取引が新制度の対象になり得るか」を把握する段階へ、対応を進める必要があります。
今回の改正で最も重要なのは税率20.315%という数字そのものではありません。分離課税の適用には、特定暗号資産であることに加え、国内の登録業者を通じた譲渡という経路要件があります。保有銘柄だけでなく、海外取引所、DEX、自己保管ウォレットを経た資産移動まで整理できていなければ、適用開始後に正確な判定はできません。

顧問先には、安易に売却時期や取引経路の変更を勧めるのではなく、まず取引履歴・取得価額・ウォレット間の移動記録を保存するよう案内することが先決です。政令・省令・通達等により残る細目が明らかになった時点で、各顧問先の取引実態、所得状況、法人保有の有無を踏まえ、個別に検討することが実務的かつ安全な対応だと考えます。
暗号資産を含む顧問先対応の標準化や業務設計を見直す際は、顧問先100件以下の会計事務所が直面する「2026年問題」もあわせてご覧ください。
取引履歴の記帳をどう効率化するか
暗号資産の取引履歴は件数が多く、顧問先から届く資料の形式もさまざまです。CSVを取り込んで仕訳作成を自動化できる環境を整えておくと、申告期の負担を抑えられます。
参考資料
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免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引・投資・申告に関する助言ではありません。暗号資産の税務上の取扱いは個別の事実関係により異なるため、実際の申告や取引判断にあたっては、最新の法令、通達、FAQ等を確認してください。