税理士事務所の集客や経営判断は、もはや感覚や経験だけで成り立つ時代ではありません。 「どの経路から問い合わせが来たのか」「広告投資は利益につながっているのか」「顧客候補はどのページで離脱しているのか」――これらを数値で把握できなければ、改善の方向性も見えず、せっかくの施策が無駄に終わるリスクがあります。
ここで注目すべきが GA4(Googleアナリティクス4) です。従来のユニバーサルアナリティクス(UA)が終了した今、GA4への移行は必須となりました。GA4は「イベントベース」という新しい仕組みを採用しており、ページビューだけでなく 問い合わせ送信や電話クリック、資料ダウンロード といった具体的な行動を計測できます。これは、単なるアクセス数ではなく「成果に直結する動き」を可視化できる点で、税理士にとって極めて有効です。
例えば、次のようなシーンで力を発揮します。
- 問い合わせ経路の特定:どの流入(検索、広告、SNS)が相談や契約に繋がっているかを可視化し、無駄な集客コストを削減できる。
- 広告投資の効果検証:広告費と成約件数を結びつけ、顧客獲得単価(CPA)を算出。ROI改善に直結する。
- 予約チャネルの最適化:電話・フォーム・オンライン予約など複数チャネルの利用傾向を比較し、最も効率の良い導線に集中できる。
こうした「数値に基づく改善」ができれば、単なるアクセス解析ではなく 顧問契約率の向上や業務効率化 に直結します。
本記事では、税理士がGA4を実務で活用するために必要なポイントを段階的に整理します。
- GA4導入と初期設定の流れ(税理士事務所向けに必要な構成・注意点)
- 税理士サイトで重視すべきKPI(問い合わせ率・電話クリック率など)
- イベントとコンバージョンの設計(実務に即した推奨イベント一覧)
- クライアントへの成果レポート作成と説明の仕方(テンプレ付き)
- 他ツールとの比較と選定基準
- 成功事例・トラブル対応・法務面の注意点
専門用語についてはすべて解説を加えます(例:「イベント=ユーザーが取る特定の行動。例:問合せフォームの送信」)。また、顧客情報管理や同意取得については 国税庁や日本税理士会連合会のガイドライン を参考にすべきであり、本記事では一般的な指針を提示します。
今すぐ取り組むべき最初の一歩は「問い合わせ関連イベントをGA4で正しく計測する」ことです。これだけで、自社サイトが成果を生んでいるかどうかが一目でわかります。記事を読み進めれば、あなたの事務所でもすぐに活用できる「GA4運用の設計図」を描けるはずです。
GA4導入と初期設定(税理士向け)

税理士事務所がWeb集客や顧客対応を強化する上で、まず避けて通れないのが GA4の導入と初期設定 です。 「まだユニバーサルアナリティクス(UA)を使っているが、具体的にどう移行すれば良いかわからない」――そう感じる方も多いのではないでしょうか。
従来のユニバーサルアナリティクス(UA)は2023年7月1日(無料版)、 2024年7月1日(有料版)に計測が終了し、GA4への移行が完了しています。このまま放置すれば アクセス解析の空白期間 が生じ、集客や広告の効果を測定できない状態になります。つまりGA4への移行は「やるかどうか」ではなく「やらざるを得ない」ものなのです。
アカウント・プロパティ・データストリームの設定ポイント(税理士のケース)
GA4では「アカウント → プロパティ → データストリーム」という三層構造でデータを管理します。 税理士業務の場合は、事務所全体で1アカウントを持ち、クライアントごとにプロパティを分ける構成が適切です。
設定例:
- 管理画面から 新規アカウント作成(事務所名を設定)。
- 各クライアントごとに プロパティを作成。タイムゾーンや通貨は顧客の拠点に合わせる。
- データストリームを追加し、WebサイトURLを登録。Measurement IDを控える。
- 権限設定を行い、内部スタッフには「編集可能」として分離。
👉 ポイント:1つのプロパティに複数サイトを混在させると、データの誤集計のリスクがあります。プロパティ単位で切り分けることで安心して管理できます。
標準タグ設置(Gtag / GTM)と検証方法
GA4のタグをサイトに設置する方法は2つ。
- gtag.jsを直接設置:コードをサイトに直貼りする方法。簡単だが、変更時に毎回編集が必要。
- Googleタグマネージャー(GTM)を使う:タグを一元管理でき、イベント追加・変更が容易。
税理士事務所では 将来的なイベント計測の増加を見越してGTM利用を推奨 します。
検証の流れ:
- GTMのプレビューでタグ発火を確認
- GA4の「Realtime」「DebugView」でイベント受信を確認
- ブラウザ拡張(Tag Assistant)でコードの設置状況を確認
👉 タグを設置しただけでは安心できません。必ず 計測が正しく反映されているか検証するプロセス を入れることが重要です。
同意管理(Cookie/個人情報)とGA4の設定(IP匿名化、データ保持)
現代のアクセス解析で忘れてはならないのが Cookie同意と個人情報保護 です。GA4では、IPアドレスはデフォルトで自動的に匿名化され、 個人を特定できる形では保存されません。ですが、それでも 同意管理プラットフォーム(CMP)と連携し、ユーザーの同意に基づいてデータ収集を制御する体制 が求められます。
具体例:
- CMP導入 → Cookieバナーで同意を取得
- 同意内容ごとにタグ発火を制御(例:「広告」同意があれば広告連携イベントを発火)
- データ保持期間は初期設定の2ヶ月から14ヶ月への変更を推奨します。 これにより前年同月比較が可能になります
- User-IDなど、個人特定につながる情報は必ず明示的な同意がある場合のみ使用
👉 注意:この分野は法律やガイドラインに関わるため、国税庁や日本税理士会連合会の情報 を確認し、必要に応じて弁護士や法務部門に相談してください。
まとめ:導入段階で意識すべき3つの要点
- プロパティをクライアントごとに分けて管理(安全性と誤集計防止のため)。
- タグはGTMで設置し、必ず検証(長期的に柔軟で効率的)。
- 同意管理を明確化(プライバシー対応を怠るとリスクになる)。
これらを最初に押さえておくことで、GA4は単なる解析ツールではなく「クライアント獲得と経営判断のための基盤」として機能します。
税理士サイトで重視すべき指標(KPI)とその見方

「アクセス数は増えているけれど、問い合わせにはつながらない」――これは多くの税理士事務所が直面する課題です。 数字を正しく追わなければ、改善の方向性は見えません。GA4を活用することで、ただの訪問者数ではなく 「成果につながる行動」 を指標化できます。ここでは、税理士が注目すべきKPIと、その読み解き方を整理します。
重要指標一覧(セッション、ユーザー、コンバージョン、コンタクト率)
まず基本的な指標を押さえましょう。
- ユーザー数:サイトを訪問した人数。新規顧客候補と既存閲覧者の比率が把握できる。
- セッション数:訪問回数。流入の増減を確認する「全体の健康診断」。
- コンバージョン数:問い合わせ送信や面談予約など、最終的に成果と定義した行動。
- コンタクト率(問い合わせ率):セッション数に対して問い合わせが発生した割合。=「集客の質」を測る指標。
👉 例:セッションが増えているのにコンタクト率が下がっている場合、広告流入の質が低下しているか、LPの内容が合っていない可能性があります。
税理士事務所特有のKPI(初回相談申込率・資料DL・専門分野への問い合わせ数)
一般的な企業と異なり、税理士サイトでは「契約前にどんなアクションがあったか」を追うことが重要です。GA4のイベント設定で、次のマイクロコンバージョンを可視化しましょう。
- 問い合わせフォーム到達率:フォームページに遷移した割合。興味関心の一次指標。
- 資料ダウンロード数:サービス資料や税務関連パンフのDL数。見込み度の高いユーザーを抽出可能。
- 予約クリック率:相談予約ボタンのクリック率。オンライン予約や電話リンクの利用傾向がわかる。
👉 例:フォーム到達は多いのに送信数が少ない場合、入力項目が多すぎることが原因です。電話番号を任意にするだけで成約率が改善するケースもあります。
LTV/CPAで「費用対効果」を測る
単に問い合わせ数を追うだけでは不十分です。広告投資や施策の費用対効果を見るために、顧客獲得単価(CPA) と 顧客生涯価値(LTV) を意識する必要があります。
- CPA = 広告費 ÷ 獲得件数
- LTV = 年間顧問料 × 継続年数(平均)
👉例:月額顧問料4万円、平均継続5年なら LTV=4万円×12ヶ月×5年=240万円。 目標CPAはLTVの10–20%(24–48万円)に設定するのが妥当です。
GA4では、Google広告と連携することでCPAの自動算出が可能です。さらに、イベントに「value(価値)」を設定すれば、流入経路ごとに売上寄与度を可視化できます。
まとめ:指標を「業務に結びつける」視点
税理士がGA4を活用する際は、指標を単に眺めるのではなく 「業務上のアクション」に結びつける ことが不可欠です。
- セッション数 → 「広告の投資配分」を決める
- 問い合わせ率 → 「LPやフォーム改善」に直結させる
- 資料DL → 「見込み顧客の温度感把握」に活かす
- CPA/LTV → 「利益確保と広告継続判断」に使う
つまり、KPIは単なる数字の羅列ではなく、事務所の売上や信頼獲得に直結する意思決定の材料 なのです。
顧客獲得につながるイベント設計とコンバージョン設計(実務)

GA4を導入しただけでは、単に「訪問数」や「ページビュー」が見えるだけです。 しかし、税理士事務所にとって本当に重要なのは 「問い合わせや予約といった成果につながる行動をどのように計測するか」 です。 これを可能にするのが イベント設計とコンバージョン設定 です。
正しくイベントを設計すれば、「どの施策が新規顧客を生んでいるか」を明確にできます。逆に、曖昧な設計のままだと、データが分散し、施策の効果検証ができなくなります。
イベント設計の基本(計測対象の選定、命名規則)
イベント設計の第一歩は「何を成果として計測するか」を決めることです。 税理士サイトの場合、以下のような行動が主要ターゲットになります。
- 問い合わせフォーム送信
- 電話番号クリック
- 資料ダウンロード
- 見積依頼や相談予約
これらは最終的に「契約」に繋がる行動であるため、優先度の高いイベント として定義します。
次に重要なのが「命名規則」です。GA4ではイベント名を自由に設定できますが、バラバラにすると集計が困難になります。推奨ルールは:
- フォーマット:entity_action
- 例:contact_submit、phone_click、brochure_download
- パラメータ:method(form/phone)、page_path、campaign(UTMなど)を必ず付与
👉 命名ルールを統一することで、複数人で運用しても「この数字が何を示しているのか」がすぐ理解できるようになります。
税理士向けの推奨イベント一覧
税理士サイトでよく使われるイベントと、業務上の意味を整理すると以下の通りです。
- contact_submit(問い合わせ送信) → 最重要コンバージョン。案件化につながる直接指標。
- phone_click(電話番号クリック) → モバイル流入の有効性を測定。特に緊急相談や初回面談に繋がりやすい。
- brochure_download(資料ダウンロード) → 高関心リードを特定する指標。見込み度の高いユーザー抽出に有効。
- booking_complete(予約完了) → 面談設定に直結する行動。顧客獲得の確度を示す。
👉 これらは「全部測る」必要はありません。まずは 問い合わせ送信+電話クリック から実装し、徐々に拡張していくのが現実的です。
Googleタグマネージャー(GTM)によるイベント実装とテスト
GA4でイベントを設定する場合、GTMを使うと管理が容易になります。基本手順は以下の通りです。
- GTMで ユーザー定義変数 を作成(例:Click URL, Click Text)。
- トリガーを設定(例:フォーム送信、特定ボタンクリック)。
- GA4イベントタグを作成し、イベント名とパラメータを設定。
- Previewモードで発火確認 → GA4のDebugViewでイベント受信を確認。
- 問題なければ本番に公開。
テストチェックリスト:
GTMプレビューでタグが1回だけ発火しているか
GA4 DebugViewに同名イベントが届いているか
パラメータ(method, page_path, campaign)が正しく渡っているか
実装直後の1週間はデータを確認し、重複や抜けを監視する
コンバージョン設定で「成果」を明確化
GA4では、登録したイベントを「コンバージョン」として指定することで、成果指標に昇格させられます。 税理士業務では以下をコンバージョンに設定するのが基本です。
- contact_submit(問い合わせ送信)
- booking_complete(予約完了)
👉 これにより「どのチャネルからの流入がコンバージョンに繋がったか」がレポートで追えるようになります。
まとめ:イベント設計は「最小限から始める」
- 最小限のイベント(問い合わせ送信・電話クリック)から始める
- 命名規則を統一してデータの意味を明確にする
- GTMで実装し、DebugViewで必ず検証する
これらを実行すれば、GA4は単なるアクセス解析ではなく、「顧客獲得のための意思決定ツール」 に変わります。
事務所の月次集客レポート作成と経営判断への活用

- 事務所概要: 所員15名、大阪府、相続税と法人税務の2つの専門サイトを運営
- 課題: どちらの分野にリソースを集中投下すべきか、経営判断の材料がなかった。
- 実施内容: GA4で両サイトのデータを比較分析。相続サイトは問い合わせ率が高い(6%)がアクセス数が少なく、法人サイトはアクセス数が多いが問い合わせ率が低い(2%)ことが判明。相続サイトには広告投資を増やしてアクセス数を確保し、法人サイトは問い合わせフォームの入力項目を10項目から5項目に削減するテストを実施。
- 結果: 相続相談の問い合わせが月15件から25件に増加。法人サイトの問い合わせ率も4%に改善。両分野の強化に成功し、年間売上が1,200万円増加した。
事例C:「地域No.1」のポジションを確立した地域密着型事務所
- 事務所概要: 所員7名、福岡県、地域密着を強みとする
- 課題: 「福岡市 税理士」といった地域名での検索流入は多いが、問い合わせに繋がっていなかった。
- 実施内容: GA4で地域別の流入を詳細に分析し、特定の市区町村からのアクセスが特に多いことを発見。その地域に特化したコンテンツ(例:「〇〇区の相続税対策は、地元を熟知した当事務所へ」)を作成し、地域での実績を具体的にアピールした。
- 結果: 対象地域からの問い合わせが月5件から12件に増加。「〇〇区ならあの事務所」という地域内でのブランド認知が向上し、紹介案件も増える相乗効果が生まれた。
まとめと次のアクション:データに基づいた事務所経営の実現

本記事で解説してきたように、GA4はクライアントを支援するためのツールではなく、税理士自身が自事務所の経営を強化するための強力な武器です。数値を扱うプロフェッショナルである税理士だからこそ、その分析能力を自事務所の集客データにも活かすことで、経営の質を大きく向上させることができます。
今すぐ始められる3つのステップ
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップから始めてみましょう。
- 【今週中に】GA4の計測を開始する まだ導入していない場合は、自事務所のWebサイトにGA4の計測タグを設置します。Web制作会社に依頼するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使えばご自身でも設定可能です。
- 【1ヶ月以内に】最重要イベントを設定する 「問い合わせ完了」と「電話番号クリック」の2つをコンバージョンとして設定します。これだけで、どのチャネルから成果が生まれているかが見えるようになります。
- 【3ヶ月以内に】月次レポートで経営判断を行う 月に一度、30分でも良いのでGA4のデータを確認する時間を設けます。「広告費を来月はどうするか」「どの専門分野のコンテンツを強化するか」といった具体的な経営判断に繋げましょう。
最後に
GA4の導入は、ゴールではなくスタートです。財務諸表と同じように、集客データも定期的に確認し、PDCAサイクルを回す文化を事務所内に根付かせること。それこそが、変化の激しい時代を勝ち抜く「データドリブンな税理士事務所」への第一歩です。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
- 事務所概要: 所員3名、東京都、法人設立支援に注力
- 課題: 月10万円のリスティング広告費をかけていたが、問い合わせは月2〜3件。費用対効果が全く合っていなかった。
- 実施内容: GA4でチャネル別の問い合わせ率を分析。結果、自然検索からの問い合わせ率が8%と高い一方、広告経由では1.5%と低いことが判明。広告の内容がターゲットとずれていると仮説を立て、広告費を月3万円に削減。残りの7万円で、ターゲット(法人設立を検討中の創業者)に響く専門コンテンツ(ブログ記事)の制作に投資した。
- 結果: 3ヶ月後、月間問い合わせ数が平均12件に増加。顧客獲得コスト(CPA)は従来の約4分の1に。年間で顧問契約が8件増加し、売上400万円アップに繋がった。
事例B:注力分野を見極め、売上1,200万円増を達成した税理士法人
- 事務所概要: 所員15名、大阪府、相続税と法人税務の2つの専門サイトを運営
- 課題: どちらの分野にリソースを集中投下すべきか、経営判断の材料がなかった。
- 実施内容: GA4で両サイトのデータを比較分析。相続サイトは問い合わせ率が高い(6%)がアクセス数が少なく、法人サイトはアクセス数が多いが問い合わせ率が低い(2%)ことが判明。相続サイトには広告投資を増やしてアクセス数を確保し、法人サイトは問い合わせフォームの入力項目を10項目から5項目に削減するテストを実施。
- 結果: 相続相談の問い合わせが月15件から25件に増加。法人サイトの問い合わせ率も4%に改善。両分野の強化に成功し、年間売上が1,200万円増加した。
事例C:「地域No.1」のポジションを確立した地域密着型事務所
- 事務所概要: 所員7名、福岡県、地域密着を強みとする
- 課題: 「福岡市 税理士」といった地域名での検索流入は多いが、問い合わせに繋がっていなかった。
- 実施内容: GA4で地域別の流入を詳細に分析し、特定の市区町村からのアクセスが特に多いことを発見。その地域に特化したコンテンツ(例:「〇〇区の相続税対策は、地元を熟知した当事務所へ」)を作成し、地域での実績を具体的にアピールした。
- 結果: 対象地域からの問い合わせが月5件から12件に増加。「〇〇区ならあの事務所」という地域内でのブランド認知が向上し、紹介案件も増える相乗効果が生まれた。
まとめと次のアクション:データに基づいた事務所経営の実現

本記事で解説してきたように、GA4はクライアントを支援するためのツールではなく、税理士自身が自事務所の経営を強化するための強力な武器です。数値を扱うプロフェッショナルである税理士だからこそ、その分析能力を自事務所の集客データにも活かすことで、経営の質を大きく向上させることができます。
今すぐ始められる3つのステップ
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップから始めてみましょう。
- 【今週中に】GA4の計測を開始する まだ導入していない場合は、自事務所のWebサイトにGA4の計測タグを設置します。Web制作会社に依頼するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使えばご自身でも設定可能です。
- 【1ヶ月以内に】最重要イベントを設定する 「問い合わせ完了」と「電話番号クリック」の2つをコンバージョンとして設定します。これだけで、どのチャネルから成果が生まれているかが見えるようになります。
- 【3ヶ月以内に】月次レポートで経営判断を行う 月に一度、30分でも良いのでGA4のデータを確認する時間を設けます。「広告費を来月はどうするか」「どの専門分野のコンテンツを強化するか」といった具体的な経営判断に繋げましょう。
最後に
GA4の導入は、ゴールではなくスタートです。財務諸表と同じように、集客データも定期的に確認し、PDCAサイクルを回す文化を事務所内に根付かせること。それこそが、変化の激しい時代を勝ち抜く「データドリブンな税理士事務所」への第一歩です。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
- 事務所概要: 所員3名、東京都、法人設立支援に注力
- 課題: 月10万円のリスティング広告費をかけていたが、問い合わせは月2〜3件。費用対効果が全く合っていなかった。
- 実施内容: GA4でチャネル別の問い合わせ率を分析。結果、自然検索からの問い合わせ率が8%と高い一方、広告経由では1.5%と低いことが判明。広告の内容がターゲットとずれていると仮説を立て、広告費を月3万円に削減。残りの7万円で、ターゲット(法人設立を検討中の創業者)に響く専門コンテンツ(ブログ記事)の制作に投資した。
- 結果: 3ヶ月後、月間問い合わせ数が平均12件に増加。顧客獲得コスト(CPA)は従来の約4分の1に。年間で顧問契約が8件増加し、売上400万円アップに繋がった。
事例B:注力分野を見極め、売上1,200万円増を達成した税理士法人
- 事務所概要: 所員15名、大阪府、相続税と法人税務の2つの専門サイトを運営
- 課題: どちらの分野にリソースを集中投下すべきか、経営判断の材料がなかった。
- 実施内容: GA4で両サイトのデータを比較分析。相続サイトは問い合わせ率が高い(6%)がアクセス数が少なく、法人サイトはアクセス数が多いが問い合わせ率が低い(2%)ことが判明。相続サイトには広告投資を増やしてアクセス数を確保し、法人サイトは問い合わせフォームの入力項目を10項目から5項目に削減するテストを実施。
- 結果: 相続相談の問い合わせが月15件から25件に増加。法人サイトの問い合わせ率も4%に改善。両分野の強化に成功し、年間売上が1,200万円増加した。
事例C:「地域No.1」のポジションを確立した地域密着型事務所
- 事務所概要: 所員7名、福岡県、地域密着を強みとする
- 課題: 「福岡市 税理士」といった地域名での検索流入は多いが、問い合わせに繋がっていなかった。
- 実施内容: GA4で地域別の流入を詳細に分析し、特定の市区町村からのアクセスが特に多いことを発見。その地域に特化したコンテンツ(例:「〇〇区の相続税対策は、地元を熟知した当事務所へ」)を作成し、地域での実績を具体的にアピールした。
- 結果: 対象地域からの問い合わせが月5件から12件に増加。「〇〇区ならあの事務所」という地域内でのブランド認知が向上し、紹介案件も増える相乗効果が生まれた。
まとめと次のアクション:データに基づいた事務所経営の実現

本記事で解説してきたように、GA4はクライアントを支援するためのツールではなく、税理士自身が自事務所の経営を強化するための強力な武器です。数値を扱うプロフェッショナルである税理士だからこそ、その分析能力を自事務所の集客データにも活かすことで、経営の質を大きく向上させることができます。
今すぐ始められる3つのステップ
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップから始めてみましょう。
- 【今週中に】GA4の計測を開始する まだ導入していない場合は、自事務所のWebサイトにGA4の計測タグを設置します。Web制作会社に依頼するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使えばご自身でも設定可能です。
- 【1ヶ月以内に】最重要イベントを設定する 「問い合わせ完了」と「電話番号クリック」の2つをコンバージョンとして設定します。これだけで、どのチャネルから成果が生まれているかが見えるようになります。
- 【3ヶ月以内に】月次レポートで経営判断を行う 月に一度、30分でも良いのでGA4のデータを確認する時間を設けます。「広告費を来月はどうするか」「どの専門分野のコンテンツを強化するか」といった具体的な経営判断に繋げましょう。
最後に
GA4の導入は、ゴールではなくスタートです。財務諸表と同じように、集客データも定期的に確認し、PDCAサイクルを回す文化を事務所内に根付かせること。それこそが、変化の激しい時代を勝ち抜く「データドリブンな税理士事務所」への第一歩です。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
- Hotjar(ホットジャー): サイト訪問者の動きを録画したり、どこがクリックされているかを色で示す「ヒートマップ」機能を提供します。「問い合わせフォームの入力途中で離脱する人が多い」といった課題の原因究明に役立ちます。(月額数千円〜)
コスト試算と投資対効果の考え方
データ活用に投資する際は、そのリターンを意識することが重要です。
例:中規模事務所の場合
- 初期投資: GA4・GTMの初期設定、Looker Studioダッシュボード構築(外注の場合:10〜30万円)
- 運用コスト: 広告費(月額5〜10万円)、分析・改善提案(外注の場合:月額3〜5万円)
投資対効果の試算: 仮に、この投資によって顧問契約が月に1件増加したとします。年間顧問料が50万円であれば、それだけで年間600万円の売上増です。初期投資と運用コストを差し引いても、十分なリターンが見込めます。GA4への投資は、単なるコストではなく、将来の売上を作るための戦略的投資と捉えるべきです。
ケーススタディ:GA4を活用した自事務所の集客改善事例

ここでは、GA4を活用して実際に集客改善に成功した税理士事務所の架空事例を3つ紹介します。ご自身の事務所の状況と照らし合わせながら、具体的な改善のヒントを見つけてください。(※これらは実在する事務所の事例を複数組み合わせた参考例です)
事例A:広告費を60%削減し、問い合わせ数を4倍にした個人事務所
- 事務所概要: 所員3名、東京都、法人設立支援に注力
- 課題: 月10万円のリスティング広告費をかけていたが、問い合わせは月2〜3件。費用対効果が全く合っていなかった。
- 実施内容: GA4でチャネル別の問い合わせ率を分析。結果、自然検索からの問い合わせ率が8%と高い一方、広告経由では1.5%と低いことが判明。広告の内容がターゲットとずれていると仮説を立て、広告費を月3万円に削減。残りの7万円で、ターゲット(法人設立を検討中の創業者)に響く専門コンテンツ(ブログ記事)の制作に投資した。
- 結果: 3ヶ月後、月間問い合わせ数が平均12件に増加。顧客獲得コスト(CPA)は従来の約4分の1に。年間で顧問契約が8件増加し、売上400万円アップに繋がった。
事例B:注力分野を見極め、売上1,200万円増を達成した税理士法人
- 事務所概要: 所員15名、大阪府、相続税と法人税務の2つの専門サイトを運営
- 課題: どちらの分野にリソースを集中投下すべきか、経営判断の材料がなかった。
- 実施内容: GA4で両サイトのデータを比較分析。相続サイトは問い合わせ率が高い(6%)がアクセス数が少なく、法人サイトはアクセス数が多いが問い合わせ率が低い(2%)ことが判明。相続サイトには広告投資を増やしてアクセス数を確保し、法人サイトは問い合わせフォームの入力項目を10項目から5項目に削減するテストを実施。
- 結果: 相続相談の問い合わせが月15件から25件に増加。法人サイトの問い合わせ率も4%に改善。両分野の強化に成功し、年間売上が1,200万円増加した。
事例C:「地域No.1」のポジションを確立した地域密着型事務所
- 事務所概要: 所員7名、福岡県、地域密着を強みとする
- 課題: 「福岡市 税理士」といった地域名での検索流入は多いが、問い合わせに繋がっていなかった。
- 実施内容: GA4で地域別の流入を詳細に分析し、特定の市区町村からのアクセスが特に多いことを発見。その地域に特化したコンテンツ(例:「〇〇区の相続税対策は、地元を熟知した当事務所へ」)を作成し、地域での実績を具体的にアピールした。
- 結果: 対象地域からの問い合わせが月5件から12件に増加。「〇〇区ならあの事務所」という地域内でのブランド認知が向上し、紹介案件も増える相乗効果が生まれた。
まとめと次のアクション:データに基づいた事務所経営の実現

本記事で解説してきたように、GA4はクライアントを支援するためのツールではなく、税理士自身が自事務所の経営を強化するための強力な武器です。数値を扱うプロフェッショナルである税理士だからこそ、その分析能力を自事務所の集客データにも活かすことで、経営の質を大きく向上させることができます。
今すぐ始められる3つのステップ
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップから始めてみましょう。
- 【今週中に】GA4の計測を開始する まだ導入していない場合は、自事務所のWebサイトにGA4の計測タグを設置します。Web制作会社に依頼するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使えばご自身でも設定可能です。
- 【1ヶ月以内に】最重要イベントを設定する 「問い合わせ完了」と「電話番号クリック」の2つをコンバージョンとして設定します。これだけで、どのチャネルから成果が生まれているかが見えるようになります。
- 【3ヶ月以内に】月次レポートで経営判断を行う 月に一度、30分でも良いのでGA4のデータを確認する時間を設けます。「広告費を来月はどうするか」「どの専門分野のコンテンツを強化するか」といった具体的な経営判断に繋げましょう。
最後に
GA4の導入は、ゴールではなくスタートです。財務諸表と同じように、集客データも定期的に確認し、PDCAサイクルを回す文化を事務所内に根付かせること。それこそが、変化の激しい時代を勝ち抜く「データドリブンな税理士事務所」への第一歩です。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
| 事務所規模 | 推奨構成 | 目的とゴール | 月額コスト目安 |
|---|---|---|---|
| 個人・小規模事務所<br>(〜5名) | GA4(無料版) | まずは現状把握。どの経路から問い合わせが来ているかを知る。 | 0円 |
| 中規模事務所<br>(6〜20名) | GA4 + Looker Studio + Google広告 | レポート作成を自動化し、広告効果を可視化。CPAを意識した運用を行う。 | 広告費実費 |
| 大規模事務所・法人<br>(20名〜) | GA4 + BigQuery + マーケティング担当者 | 複数サイトのデータを統合分析。LTV(顧客生涯価値)を算出し、長期的な投資対効果を最大化する。 | 担当者人件費 |
補完ツールの検討:
- Hotjar(ホットジャー): サイト訪問者の動きを録画したり、どこがクリックされているかを色で示す「ヒートマップ」機能を提供します。「問い合わせフォームの入力途中で離脱する人が多い」といった課題の原因究明に役立ちます。(月額数千円〜)
コスト試算と投資対効果の考え方
データ活用に投資する際は、そのリターンを意識することが重要です。
例:中規模事務所の場合
- 初期投資: GA4・GTMの初期設定、Looker Studioダッシュボード構築(外注の場合:10〜30万円)
- 運用コスト: 広告費(月額5〜10万円)、分析・改善提案(外注の場合:月額3〜5万円)
投資対効果の試算: 仮に、この投資によって顧問契約が月に1件増加したとします。年間顧問料が50万円であれば、それだけで年間600万円の売上増です。初期投資と運用コストを差し引いても、十分なリターンが見込めます。GA4への投資は、単なるコストではなく、将来の売上を作るための戦略的投資と捉えるべきです。
ケーススタディ:GA4を活用した自事務所の集客改善事例

ここでは、GA4を活用して実際に集客改善に成功した税理士事務所の架空事例を3つ紹介します。ご自身の事務所の状況と照らし合わせながら、具体的な改善のヒントを見つけてください。(※これらは実在する事務所の事例を複数組み合わせた参考例です)
事例A:広告費を60%削減し、問い合わせ数を4倍にした個人事務所
- 事務所概要: 所員3名、東京都、法人設立支援に注力
- 課題: 月10万円のリスティング広告費をかけていたが、問い合わせは月2〜3件。費用対効果が全く合っていなかった。
- 実施内容: GA4でチャネル別の問い合わせ率を分析。結果、自然検索からの問い合わせ率が8%と高い一方、広告経由では1.5%と低いことが判明。広告の内容がターゲットとずれていると仮説を立て、広告費を月3万円に削減。残りの7万円で、ターゲット(法人設立を検討中の創業者)に響く専門コンテンツ(ブログ記事)の制作に投資した。
- 結果: 3ヶ月後、月間問い合わせ数が平均12件に増加。顧客獲得コスト(CPA)は従来の約4分の1に。年間で顧問契約が8件増加し、売上400万円アップに繋がった。
事例B:注力分野を見極め、売上1,200万円増を達成した税理士法人
- 事務所概要: 所員15名、大阪府、相続税と法人税務の2つの専門サイトを運営
- 課題: どちらの分野にリソースを集中投下すべきか、経営判断の材料がなかった。
- 実施内容: GA4で両サイトのデータを比較分析。相続サイトは問い合わせ率が高い(6%)がアクセス数が少なく、法人サイトはアクセス数が多いが問い合わせ率が低い(2%)ことが判明。相続サイトには広告投資を増やしてアクセス数を確保し、法人サイトは問い合わせフォームの入力項目を10項目から5項目に削減するテストを実施。
- 結果: 相続相談の問い合わせが月15件から25件に増加。法人サイトの問い合わせ率も4%に改善。両分野の強化に成功し、年間売上が1,200万円増加した。
事例C:「地域No.1」のポジションを確立した地域密着型事務所
- 事務所概要: 所員7名、福岡県、地域密着を強みとする
- 課題: 「福岡市 税理士」といった地域名での検索流入は多いが、問い合わせに繋がっていなかった。
- 実施内容: GA4で地域別の流入を詳細に分析し、特定の市区町村からのアクセスが特に多いことを発見。その地域に特化したコンテンツ(例:「〇〇区の相続税対策は、地元を熟知した当事務所へ」)を作成し、地域での実績を具体的にアピールした。
- 結果: 対象地域からの問い合わせが月5件から12件に増加。「〇〇区ならあの事務所」という地域内でのブランド認知が向上し、紹介案件も増える相乗効果が生まれた。
まとめと次のアクション:データに基づいた事務所経営の実現

本記事で解説してきたように、GA4はクライアントを支援するためのツールではなく、税理士自身が自事務所の経営を強化するための強力な武器です。数値を扱うプロフェッショナルである税理士だからこそ、その分析能力を自事務所の集客データにも活かすことで、経営の質を大きく向上させることができます。
今すぐ始められる3つのステップ
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップから始めてみましょう。
- 【今週中に】GA4の計測を開始する まだ導入していない場合は、自事務所のWebサイトにGA4の計測タグを設置します。Web制作会社に依頼するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使えばご自身でも設定可能です。
- 【1ヶ月以内に】最重要イベントを設定する 「問い合わせ完了」と「電話番号クリック」の2つをコンバージョンとして設定します。これだけで、どのチャネルから成果が生まれているかが見えるようになります。
- 【3ヶ月以内に】月次レポートで経営判断を行う 月に一度、30分でも良いのでGA4のデータを確認する時間を設けます。「広告費を来月はどうするか」「どの専門分野のコンテンツを強化するか」といった具体的な経営判断に繋げましょう。
最後に
GA4の導入は、ゴールではなくスタートです。財務諸表と同じように、集客データも定期的に確認し、PDCAサイクルを回す文化を事務所内に根付かせること。それこそが、変化の激しい時代を勝ち抜く「データドリブンな税理士事務所」への第一歩です。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
GA4を導入しても、「数字を眺めるだけ」では意味がありません。税理士が財務諸表を読み解き経営者に的確な助言を与えるように、自事務所の集客データも**「経営数値」**として扱い、具体的なアクションに繋げることが重要です。ここでは、税理士自身が自事務所の経営判断のために活用するレポートの作成方法と、その活用法を解説します。
レポートは「信頼できる意思決定」のためにある
クライアントに提出するためではなく、自事務所の成長のためにレポートを作成します。目的は、感覚や経験だけに頼らず、データという客観的な根拠に基づいて「どの分野に注力すべきか」「広告投資は適切か」といった経営判断を行うことです。
月次集客レポートの基本構成
Looker Studioなどのツールで一度テンプレートを作成すれば、毎月自動で更新されるダッシュボードを構築できます。確認すべき項目は以下の4つに絞ると良いでしょう。
| レポート項目 | 確認する内容 | 経営上の問い |
|---|---|---|
| 1. 当月サマリー | 問い合わせ総数、問い合わせ率(CVR)、顧問契約獲得コスト(CPA)の推移 | 先月と比べて、サイトの集客力は向上したか? |
| 2. 流入チャネル分析 | 自然検索、有料広告、SNS、紹介サイトなど、どの経路からの問い合わせが多いか | どのチャネルへの投資(時間・費用)を増やすべきか? |
| 3. 専門分野別の傾向 | 「相続」「法人税務」「確定申告」など、どのサービスページの閲覧や問い合わせが多いか | 市場のニーズはどこにあるか?自事務所の強みと合致しているか? |
| 4. 改善アクション | データから読み取った課題と、次月に実施する具体的な施策を1〜2点に絞って記述 | 次の打ち手は何か?(例:広告予算の再配分、特定ページの改修) |
経営判断への活用例
GA4のデータは、以下のような具体的な経営判断に直結します。
広告予算の最適配分
- 状況: 自然検索からの問い合わせ率が5%、リスティング広告からが2%だった。
- 判断: 広告予算を削減し、その分をSEO対策(専門コンテンツの追加など)に投資する。これにより、全体の顧客獲得コスト(CPA)を抑制し、利益率を改善できる。
注力すべき専門分野の決定
- 状況: 「相続税相談」に関するページの閲覧数が前年比で150%増加している。
- 判断: 市場の関心が高まっていると判断し、相続専門サイトの拡充や、相続に強いスタッフの採用・育成を検討する。事務所の専門性を強化し、高単価案件の獲得を目指す。
地域戦略の見直し
- 状況: 特定の市区町村(例:〇〇市)からのアクセスは多いが、問い合わせに繋がっていない。
- 判断: その地域の競合事務所の料金設定やサービス内容を再調査する。自事務所の料金体系やサービス内容が、その地域のニーズと合致していない可能性を検討する。
このように、GA4は単なるアクセス解析ツールではなく、事務所経営の羅針盤として機能します。財務データと並行して集客データを確認する体制を整えることで、データに基づいた力強い経営が実現します。
他ツール比較:自事務所の規模に合わせた最適な構成

GA4は非常に強力ですが、万能ではありません。また、すべての機能を使いこなす必要もありません。ここでは、税理士事務所の規模や目的に応じて、どのようなツールを組み合わせるのが現実的か、具体的な構成とコスト感を解説します。
事務所の規模別・推奨構成
| 事務所規模 | 推奨構成 | 目的とゴール | 月額コスト目安 |
|---|---|---|---|
| 個人・小規模事務所<br>(〜5名) | GA4(無料版) | まずは現状把握。どの経路から問い合わせが来ているかを知る。 | 0円 |
| 中規模事務所<br>(6〜20名) | GA4 + Looker Studio + Google広告 | レポート作成を自動化し、広告効果を可視化。CPAを意識した運用を行う。 | 広告費実費 |
| 大規模事務所・法人<br>(20名〜) | GA4 + BigQuery + マーケティング担当者 | 複数サイトのデータを統合分析。LTV(顧客生涯価値)を算出し、長期的な投資対効果を最大化する。 | 担当者人件費 |
補完ツールの検討:
- Hotjar(ホットジャー): サイト訪問者の動きを録画したり、どこがクリックされているかを色で示す「ヒートマップ」機能を提供します。「問い合わせフォームの入力途中で離脱する人が多い」といった課題の原因究明に役立ちます。(月額数千円〜)
コスト試算と投資対効果の考え方
データ活用に投資する際は、そのリターンを意識することが重要です。
例:中規模事務所の場合
- 初期投資: GA4・GTMの初期設定、Looker Studioダッシュボード構築(外注の場合:10〜30万円)
- 運用コスト: 広告費(月額5〜10万円)、分析・改善提案(外注の場合:月額3〜5万円)
投資対効果の試算: 仮に、この投資によって顧問契約が月に1件増加したとします。年間顧問料が50万円であれば、それだけで年間600万円の売上増です。初期投資と運用コストを差し引いても、十分なリターンが見込めます。GA4への投資は、単なるコストではなく、将来の売上を作るための戦略的投資と捉えるべきです。
ケーススタディ:GA4を活用した自事務所の集客改善事例

ここでは、GA4を活用して実際に集客改善に成功した税理士事務所の架空事例を3つ紹介します。ご自身の事務所の状況と照らし合わせながら、具体的な改善のヒントを見つけてください。(※これらは実在する事務所の事例を複数組み合わせた参考例です)
事例A:広告費を60%削減し、問い合わせ数を4倍にした個人事務所
- 事務所概要: 所員3名、東京都、法人設立支援に注力
- 課題: 月10万円のリスティング広告費をかけていたが、問い合わせは月2〜3件。費用対効果が全く合っていなかった。
- 実施内容: GA4でチャネル別の問い合わせ率を分析。結果、自然検索からの問い合わせ率が8%と高い一方、広告経由では1.5%と低いことが判明。広告の内容がターゲットとずれていると仮説を立て、広告費を月3万円に削減。残りの7万円で、ターゲット(法人設立を検討中の創業者)に響く専門コンテンツ(ブログ記事)の制作に投資した。
- 結果: 3ヶ月後、月間問い合わせ数が平均12件に増加。顧客獲得コスト(CPA)は従来の約4分の1に。年間で顧問契約が8件増加し、売上400万円アップに繋がった。
事例B:注力分野を見極め、売上1,200万円増を達成した税理士法人
- 事務所概要: 所員15名、大阪府、相続税と法人税務の2つの専門サイトを運営
- 課題: どちらの分野にリソースを集中投下すべきか、経営判断の材料がなかった。
- 実施内容: GA4で両サイトのデータを比較分析。相続サイトは問い合わせ率が高い(6%)がアクセス数が少なく、法人サイトはアクセス数が多いが問い合わせ率が低い(2%)ことが判明。相続サイトには広告投資を増やしてアクセス数を確保し、法人サイトは問い合わせフォームの入力項目を10項目から5項目に削減するテストを実施。
- 結果: 相続相談の問い合わせが月15件から25件に増加。法人サイトの問い合わせ率も4%に改善。両分野の強化に成功し、年間売上が1,200万円増加した。
事例C:「地域No.1」のポジションを確立した地域密着型事務所
- 事務所概要: 所員7名、福岡県、地域密着を強みとする
- 課題: 「福岡市 税理士」といった地域名での検索流入は多いが、問い合わせに繋がっていなかった。
- 実施内容: GA4で地域別の流入を詳細に分析し、特定の市区町村からのアクセスが特に多いことを発見。その地域に特化したコンテンツ(例:「〇〇区の相続税対策は、地元を熟知した当事務所へ」)を作成し、地域での実績を具体的にアピールした。
- 結果: 対象地域からの問い合わせが月5件から12件に増加。「〇〇区ならあの事務所」という地域内でのブランド認知が向上し、紹介案件も増える相乗効果が生まれた。
まとめと次のアクション:データに基づいた事務所経営の実現

本記事で解説してきたように、GA4はクライアントを支援するためのツールではなく、税理士自身が自事務所の経営を強化するための強力な武器です。数値を扱うプロフェッショナルである税理士だからこそ、その分析能力を自事務所の集客データにも活かすことで、経営の質を大きく向上させることができます。
今すぐ始められる3つのステップ
難しく考える必要はありません。まずは以下の3ステップから始めてみましょう。
- 【今週中に】GA4の計測を開始する まだ導入していない場合は、自事務所のWebサイトにGA4の計測タグを設置します。Web制作会社に依頼するか、Googleタグマネージャー(GTM)を使えばご自身でも設定可能です。
- 【1ヶ月以内に】最重要イベントを設定する 「問い合わせ完了」と「電話番号クリック」の2つをコンバージョンとして設定します。これだけで、どのチャネルから成果が生まれているかが見えるようになります。
- 【3ヶ月以内に】月次レポートで経営判断を行う 月に一度、30分でも良いのでGA4のデータを確認する時間を設けます。「広告費を来月はどうするか」「どの専門分野のコンテンツを強化するか」といった具体的な経営判断に繋げましょう。
最後に
GA4の導入は、ゴールではなくスタートです。財務諸表と同じように、集客データも定期的に確認し、PDCAサイクルを回す文化を事務所内に根付かせること。それこそが、変化の激しい時代を勝ち抜く「データドリブンな税理士事務所」への第一歩です。この記事が、その一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
